いよいよ2024年(令和6年)4月から建設業でも働き方改革が適用されます。
建設業にとっては非常に厳しい法律の内容となっているので、今から対策を講じる必要があります。
法改正の内容、それにともなって予想される「建設業の2024年問題」の影響と対策について、個人事業主や一人親方などの職人目線でわかりやすく解説していきます。
・概要だけでも知りたい人向け
・詳しく知りたい人向け
・ごちゃごちゃした国土交通省や厚生労働省のガイドラインを読みたくない人向け
なぜ働き方改革を行う必要があるのか?
働きすぎ問題 + 休みが取れない問題のグラフ
慢性的な人手不足・後継者不足問題のグラフ
まとめると、建設業の労働環境は他産業に比べて悪い
・長時間労働が常態化している
・週休2日の割合が2割以下。休日が少ない
・立場の弱い下請け業者は長時間労働が避けられない構造になっている
建設業以外にも2024年問題の対象となる業界があります。
中でも代表的なものは物流・運送業界で、トラックドライバーの不足などが課題とされています。
労働時間の基本についておさらい
・労働時間は、労働基準法によって定められている。
・労働基準法は、労働者を保護するため、使用者が労働者に法定労働時間を超えて労働させる場合などには、事前に労使協定を締結しなければならないと定めている。
・休日に関するルール
原則として毎週1日以上の休日を与えるか、または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない。
・「36協定」は、時間外労働についてのルールを定める労使協定のこと
・法定労働時間を超える労働時間(時間外労働)に対しては、会社は割増賃金を支払わなければならない
<36協定締結から届出までの流れ>
出典:厚生労働省「2021年4月から36協定届の様式が新しくなります」
参考)厚生労働省 時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)
働き方改革関連法の改正ポイント
建設業の課題である「時間外労働の上限規制」および、2023年4月から中小企業に適用開始された「時間外労働に関連する割増賃金引き上げ」についてイラストで改正のポイントを解説します。
改正ポイント1 時間外労働の上限規制
簡単に説明すると、残業時間の上限が決められる。
2024年3月末まで
建設業は「36協定」を締結し、届出があれば時間外労働時間(残業)に上限の規制はなく、法定労働時間を超えても罰則なし。
2024年4月から
法定労働時間(1日8時間、週40時間以内)を超えて働かせる場合、以下の2点が必要になる
1.労働基準法第36条に基づく労使協定「36協定」の締結
2.所轄労働基準監督署長への届出
出典:厚生労働省「働き方改革関連法の概要と 時間外労働の上限規制」
改正ポイント2 年5日の有給消化の義務化
改正ポイント3 割増賃金引上げの補足
・60時間を超える法定時間外労働の割増賃金率が25%から50%へと引き上げ。
・建設業も企業の規模に関係なく、月の時間外労働が60時間を超える場合には、50%の割増賃金を支払わなければならない。
働き方改革で注意すべきこと
働き方改革の対象者は従業員
事業主や一人親方は労働基準法の定めに基づく労働者ではないため、働き方改革の対象にならない(労働時間や休日などの規制はなく、働き方改革の影響を受けない)
偽装一人親方問題
働き方が「労働者と同様」と判断される場合、一人親方として認められない
通常の請負契約では、事業者が一人親方に対して社会保険料や労災保険料を支払う必要はないが、一人親方が労働者として取扱われる場合には、事業者に法定福利費の支払い義務が生じる。
・法定福利費や労働関係諸経費の削減を意図して技術者を独立させる一人親方化や、雇用関係の
実体があるにもかかわらず偽装請負といったケースが問題になっている。
・偽装請負は違法就労として罰則を受けるだけではなく、建設業許可取り消しになる可能性がある。
違反した場合の罰則
(事業主が)労働者1人あたり6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金
役人は理解していない?働き方改革開始後に起きる問題・課題の一例
① 工期短縮分の穴埋めを誰がやるのか問題
●働き方改革に該当しない事業主や一人親方が従業員の穴埋めをすることになる
●サービス残業が増え、逆に仕事が増えるのではないか?●何かしらのしわ寄せが発生するため、お客さんの理解も必要になる
●工期の短縮(6日を5日にどう縮めるか?、誰かにしわ寄せがいく)
本音)簡単に効率化できれば初めからやってるわ
●自社だけの問題ではない
・管理された大手の現場はいいが、個人相手の仕事など、多くの職人が入れ代わり立ち代わり出入りする現場で、工期管理するのは難しい
・自社だけで仕事を行っているわけではないので、現場に関わる職人みんなが働き方改革について理解していないと足並みがそろわない
元請との賃金交渉が必須に。休みが増えるということは給料が減る
本音)週6の給料で週5勤務するには20%賃金が上がらないと釣り合わない
・請負の会社の休みが増えると実質的な給与減(日給月給だから収入減るだけ)・インボイス制度の影響をモロに受ける
・社会保険の管理を自分でできない
本音)今までは事業所でやってもらっていたので内容がさっぱりわからない
職人の声
事務管理の問題
・タイムカードがあるわけではないので、時間管理が曖昧
・仕事上、天候に左右されるが読めない部分も多い
その他問題
・融通が利きにくくなり、取引先との関係が壊れる(これまでの仕事を無下に断ることもできない)
・個人事業所でデジタル化出来る仕事を誰が理解しているのか?
時間と金をかけてまで導入するメリットはあるのか?
働き方改革によって生まれる悪循環の例
職人の声
・法規制の縛りが厳しくなっただけで、具体的な解決策が示されていない。結局企業や現場に責任を丸投げしているだけ。
・元請(発注者)の立場が強すぎるので結局すべて元請次第。下請は残業したくてしているわけではない。
・法律で縛りをつくったところで、サービス残業増え、給料下がり、余計人手不足が加速する未来しか見えない。
・大手は対応できるかもしれないが、中小事業者が働き方を大きく見直すのは現実的に難しい。
・賃上げが全く見込めない状況下で働く時間を規制すれば賃金は下がるだけ。
・他の法律と同じで、改正されたところで、内容を把握している職人は少ない。
・近年デジタル化と言っているが、デジタルに移行してもあまり時間短縮にならないし、移行するのにも余計な手間と費用がかかるだけ。
・こういう規制ができてしわ寄せの影響を受けるのは末端の社員
・結局何も対策できないまま2024年問題を迎えてしまった感じがする。
・人もいない、時間もない、工期もない、予算もない。どうしろと。
・「長時間労働の是正、技能にふさわしい給与・社会保険加入の徹底、ICT(情報通信技術)の活用による生産性向上、建設キャリアアップシステムの登録」を対策として掲げているが、実現性が低い。実態にそぐわない内容も多いため、中小企業の現場になかなか浸透しない。
参考)yahooニュースのコメントでも、現場を知る職人の様々な声が寄せられています
働き方改革関連ニュース
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働き方改革の対策の一例
職人の声
・「なぜ働き方改革を行う必要があるのか?」で取り上げた問題を放置できるものではない。業界として変わっていかなければならないのも事実。
・会社によって事情、風土、パワーバランス、立場などすべてが異なるため、それぞれの状況に合わせた対応策を考え、少しずつでも時代に合った働き方に改善していくしかない。
・改正内容や従業員の管理方法について準備が必要
・元請(発注者)に変わってもらうことに期待する。過剰要求や無駄な書類を減らす、工期の余裕をみるようにしてほしい。
・労働時間の削減と業務の両立は難しいが、慣例作業の見直しなど、地道に図っていく。
罰則ができるため、事業主は知らなかったでは済まされない。
道のりは険しい…
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【イラストで簡単に】
いよいよ2024年(令和6年)4月から #建設業 でも #働き方改革 が適用厳しい法律の内容となっているので、今から対策を講じる必要があります
法改正の内容や、#2024年問題 の影響と対策など、国交省や厚労省の資料では見えない、事業主や一人親方の職人目線でわかりやすく解説 pic.twitter.com/V3C7Oinvbq
— (一社)宮城県建設職組合連合会 (@miyagi_kenren) December 11, 2023
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